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営業におけるハイブリットモデルがもたらすベネフィットとは?

著者:conversationHEALTH社 CCO: リチャード・マーシル (Richard Marcil) Capgemini Invent社 ビジネステクノロジー部門 バイスプレジデント: シーラ・パテル(Sheila Patel) 

翻訳:conversationHEALTH社 古田南菜子 (Nanako Furuta)

新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の影響とデジタル改革(DX)の推進により、製薬会社の営業活動もオンラインに大きく舵を切っています。今回の記事では、海外企業でのデジタル営業の先進事例として、営業戦略と学会開催の2例をご紹介し、日本はどのようなデジタル化を目指すべきかをお伝えできればと思います。 

進化する営業:ハイブリッド・コマーシャルモデルと対話型AIエージェント

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パンデミックによって、製薬会社と顧客のコミュニケーション方法は大きく変化しました。これまで、営業担当者が病院に訪問し、直接、医療従事者の声が聞けたのに対し、パンデミック後のコミュニケーションは、ほぼオンラインに移行しました。この変化は、パンデミック開始から1年が経過した現在も継続しており、顧客の行動も顕著に変化しています。

いつでも、どこでも情報入手が可能なデジタルメディアへのコミュニケーションに業界全体が移行したことにより、顧客はより手軽に情報収集が可能になりました。その便利さから、ワクチンの接種が進んでいる現在でも、新たなコミュニケーション方法としてデジタルが主流になって来ています。つまり、パンデミックにより、人々とデジタルの関係性が根本的に変わったのです。

デジタル化を推進する企業の中には現在、大きく2種類のアプローチがあります。
一つ目は、顧客とのコミュニケーションツールとしてデジタルを導入するアプローチです。この方法により、顧客とのやりとりをオンライン会議や電話会議といった、リモートエンゲージメントによって維持することが可能です。


2つ目は、上記例より一歩進んだ、より本格的なデジタル改革を行った企業のアプローチとして「ハイブリッド・コマーシャル・モデル」が挙げられます。このような会社は顧客とのコミュニケーションのみならず、デジタル戦略に基づいたセールス活動のパーソナライズ化や、自動化されたカスタマージャーニーなどのオムニチャネル・エンゲージメントに取り組んでいます。営業担当者とデジタルツールを組み合わせ、顧客へのリーチと対話頻度を改善させることが可能です。


しかし、このハイブリッド・コマーシャル・モデルも完璧なアプローチではありません。現在議論されている課題は、顧客が望むリーチと対話頻度を必ずしも提案できているとは限らない点です。顧客は、好きな時好きな商品や情報を、自身が望むチャネルで提供して欲しいと考えている一方、現在主流となってるハイブリッド・コマーシャル・モデルでは、この顧客のニーズへ満足に対応できているとは言えません。この課題を解決するために、そして、他企業と差別化、優位性を得るためにも、企業は戦略的に商品、情報提供のデジタル化を進める一方、顧客を第一に考え、持続可能で多地域、多言語、多商品の展開ができる方法を展開する必要があります。

そのためにも、対話型AIを用いた、「プッシュ」「プル」の2つのコミュニケーション方法をデジタルで提供することが挙げられます。プッシュはメーカー主導のアウトバウンドエンゲージメント、プルはセルフサービスなどの顧客主導のインバウンドエンゲージメントを指します。企業が商品や情報提供を一方的にお客様へプッシュするだけではなく、顧客からの興味や質問をいただく環境を提供することで、顧客が求めている商品や情報を届けることが可能となります。この2つのコミュニケーションをうまく利用すると、顧客へのリーチと対話頻度が高まることが期待されます。

もう1つの重要な側面は、最新のテクノロジーにより、顧客の個別のニーズを踏まえカスタマイズしたユーザエクスペリエンスの提供が可能になっている点です。パンデミックの影響で、テキストや音声などのチャンネルを問わず、対話型AIエージェントの導入と利用が加速しています。これらの対話型AIエージェントの中には、カンバセーションヘルス社のサービスなど、顧客を個別識別し、個々のニーズにあったマーケティングやセールス戦略を提案・実行するサービスを提案するものが出てきており、必要に応じて営業担当者と情報を共有することができるものもあります。営業チームは今や、人間とAIの「協働」で構成されるようになったのです。

ポストコロナ時代に向け、今後もAIエージェントが提供するカスタマイズされた体験を求める顧客ニーズは更に増すと考えられるため、製薬企業は展開が容易で、かつコスト削減と業務の効率化につながるデジタルテクノロジーの開発と導入に投資を進めていくと私たちは考えています。

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進化する学会:学会サポートと対話型AIの活用方法

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先述した営業モデルの進化と同様に、医療学会もパンデミックを通して大きな変化を遂げました。パンデミック以前は世界各国から医師や医療従事者が学会会場に足を運び、対面でセミナーや懇親会に参加していましたが、パンデミックの影響で旅行や対面の開催が制限され、大規模な医療学会はバーチャル開催に移行しています。

学会のバーチャル式への移行は、2つの理由から今後も続くと予想されています。まず、開催側のコスト削減です。バーチャル開催することによって、旅費や開催費が削減され大幅なコストカットに繋がります。

そして2つ目は参加者の医師にとっての利便性です。参加者にとって自宅やオフィスからイベントに参加できることは大きな利点です。実際2020年以降デジタルツールの使用を余儀なくされた医師は、以前に比べ、遥かにデジタル慣れが進んだとみられ、デジタルの有用性を体感された方も多いと推測されます。
学会が企業と医師の双方にとって価値があることは間違いありません。特に医師やオピニオンリーダーは、医学教育や知識を得るための主要な情報源として学会を利用しており、最新の臨床情報を得たり、他病院の医師との交流をする場として活用されていました。一方で対面開催された学会では、セミナーや会議の数が多く、全てのセミナーに参加することができなかったり、医師全員と交流することはあまり現実的ではなかったといえます。

オンライン学会となった現在、医療従事者のアクセス、エンゲージメント、価値を高める取り組みとして、オンライン限定イベント、主要な論文やプレゼンテーションの要約提供や一部のコンテンツをゲームとして提供するなど、様々な取り組みが行われています。しかし、医師が求める使い勝手の良い学会としては改善の余地があり、そこで現在注目されているのが、対面イベントとバーチャルイベントの両方を活用したハイブリットモデルです。

このハイブリッドモデルはデジタル選好の医師にも満足いただけるよう、アクセスがより簡単で利便性が高い学会の開催となっていると同時に、懇親会への参加など、対人で行うメリットも享受できるようになっています。

現在、ハイブリッド化から一歩進めて、会議の主催者である製薬会社や協会は、デジタルを活用し、医師と24時間365日エンゲージメントができ、また情報を積極的に配信することが可能な体制を構築することに関心を高めています。この体制の例として、バーチャル個別ブース、e-ラーニングプラットフォーム、AIによるエンゲージメントなどの医師との新しいエンゲージメントを可能にするデジタルソリューションの導入が挙げられます。
加えて全ての参加者に、自分専用のバーチャル学会アシスタントをダウンロードして頂くことで学会で発表した最新研究の要約を提供したりや、カスタマイズしたコンテンツを医師に提供することで、医師が関心のあるコンテンツを手軽に見られるようバーチャルアシスタントがサポートすることが可能になります。

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現在主流となってきているハイブリッド学会ですが、製薬会社が医師へのより良いリーチとエンゲージメントを達成し、かつ医師の求めるカスタマイズされたコンテンツを提供するために、対話型AI活用しバーチャルアシスタントを学会開催に導入するなど、デジタルを更に活用した新たな学会の取り組みが日本でも主流になる日は近いと感じています。



オリジナル記事 (英語):

https://conversationhealth.medium.com/the-true-hybrid-commercial-sales-model-fd517bdc6511
https://conversationhealth.medium.com/the-medical-congress-is-dead-long-live-the-hybrid-medical-congress-4a656021ada2

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